2026.07.30

2026.07.30
今回から、全3回にわたって、万博の照明デザインレポートをお送りします!
万博は、世界各国がそれぞれの産業や文化、歩んできた成果を紹介する大きな博覧会です。
期間限定で開催されるイベントとしては、世界でも最大規模のものと言えるでしょう。会場には多くの国のパビリオンが並び、それぞれがその国らしさを表現しています。
これらのパビリオンは、仮設であることや限られた予算といった条件の中でつくられています。そのような制約があるからこそ、夜の見せ方をどこまで絞り込み、どのように伝えるかがとても重要になります。
昼とは違い、夜は光そのものが建築の印象を大きく左右するため、人々を惹きつけるには、どんな光がふさわしいのか。そして、明るさや色、影のつくり方によって、パビリオンの表情をどう表現していくかが、非常に重要なポイントとなるのです。
万博の照明調査では、デザイナー6名がそれぞれのゾーンに分かれ、ゾーン内のすべてのパビリオンを調査し、各デザイナーが推す、担当エリア内のベスト3と特別賞を発表しました。
今回は、それぞれの個性が出て、面白い発表となりましたので、ご紹介しますね。

こちらがA~Fの6つのゾーン分けとなります。
1人1人の範囲が広いので、大変な調査となりました。
第1回は、Aゾーン(辻担当)、Bゾーン(永田担当)をご紹介します。

まずは、辻が担当したAゾーンです。

彼女の中の 第3位は、チェコパビリオン。
天井に設置されたライン照明が建築の造形とマッチしており、建築自体が光る行灯のようにも見えます。中の人の動きが透けて見えるのもアクセントとなっており高評価でした。

第2位は、パナソニックグループパビリオン「ノモの国」です。
こちらは、建築全体として柔らかい印象のデザインとなっており、有機的な軽やかさがあります。3つの高さに照明器具が置かれており、内側から発光しているような光のグラデーションが美しい照明デザインとなっています。

そして、第1位は、EXPOナショナルデーホール「レイガーデン」です。
こちらは、実際に行ってみると照明手法が統一されており、夜の外観照明が非常に美しいです。
特に軒下部分を照らす光のレイヤーが、木材の美しさを引き立たせています。

特別賞は、トルクメニスタンパビリオンです。
このパビリオンは外観にメディアファサードを使用しており、とにかく明るく、夜の会場ではひときわ目立っていました。
照明デザイナーから見ると明るすぎる印象だったのですが、この明るさが逆にSNSで話題を呼び、トルクメニスタンという国の知名度を上げるという点では評価されました。
写真で見てもわかるのですが、右隣のバーレーンパビリオンにもメディアファサードの明るい光が青く映り込んでおり、その光量の大きさに驚かされます。
常設では考えられませんが、常識から外れた手法をとることによって、注目を集めるというやり方は、仮設ならではかもしれませんね。
<四方考察>
パナソニックグループパビリオン「ノモの国」が素敵でした。
スチールパイプをクネクネと曲げたリング状の立体モチーフに特殊なオーガンジーの膜が取り付けてあり、常設では挑戦出来ないような軽やかさがあります。まさに万博だからこそですね!子ども達に楽しんでもらいたいというコンセプトのパビリオンなので、子どもの好きなシャボン玉から着想を得たとの事です。
会場は非常に風が強かったので、風で揺らめくオーガンジーの膜と移ろう光が本当にシャボン玉のような美しさと儚さを表現しており、場所の条件と仮設という特質を活かした、非常に秀逸なパビリオンでした。

続いては、永田が担当したBゾーンです。

彼女にとっての 第3位は、シグネチャーパビリオンのBetter Co-Beingです。
他のパビリオンと違い建物の実体がないのが魅力のパビリオンです。
入場しないと中の様子は詳しくわからないのですが、外から見ただけでも、宙に浮いているグリッド状の構造が薄紫色の光で照らされている様子が見え、夜の空に突然現れた不思議な雲のようで非常に美しかったです。

第2位は、カタールパビリオンです。
カタールパビリオンは、照明デザイナーが入っているだけあり、まとまりのある照明デザインとなっていました。
周囲を水盤で囲まれていて、膜の足のような部分は水中からアッパーライティングされており、膜の上部はポール灯により程よい明るさ感となっています。

第1位は、今回の万博で最も注目を集めた「null²」です。
外観は鏡面のため光を受けて輝くことはありませんが、液晶部分の映像演出やムービングライトが取り付けてあり、夜でも魅力的に見えるような工夫が施されていました。
多くの人が立ち止まり写真を撮影している様子から、目立つ光や動きのある光は人の視線を集めやすく、人々を魅了する大きな要素であるということを改めて認識しました。

特別賞は、いのちの遊び クラゲ館です。
子ども達が遊べるというコンセプトは素晴らしかったのですが、外から見ると屋根部分の光が繋がっておらず、点々とした光が残念な印象でした。
永田からは改善案という事で、光が繋がり、より建築の有機的な形をみせる案が提案されました。
<四方考察>
照明視点ではありませんが、シグネチャーパビリオンのBetter Co-Beingが、とても気になりました。
形がしっかり見えるパビリオンが多い中、建築家が計画したパビリオンでありながら、具体的な形がなく、気配で存在感を出し、天候や季節によりその様相が変わるというのは、とても斬新でした。展示内容ではなく自然の変化で雰囲気が変わるというのもすごいアイデアです。
まずは、2組お伝えしました。いかがでしたでしょうか。
会場内に様々な魅力のパビリオンがひしめき合っており、これぞ万博の醍醐味です。
あと2回、万博レポートをお伝えしますので、是非ご覧ください!
(つづく)