SIRIUS MAGAZINE

ABOUT

シリウスマガジンでは、最近のお仕事や社内の様子、
照明の話など様々な情報を発信していきます!

2023.11.02

vol.19[ 広報の現場レポート!] ~ 第2回 KIND Center編~

皆さん、お待ちかねの広報現場レポート第2回となりました!
前回のレポートをみて、実際に行ってみたよ!という方がいれば嬉しいです。
今回も大好きな現場に行ってきました!皆さんにご紹介したい事が沢山あるので、
さっそくいってみましょう!

第2回目は、「KIND Center」をご紹介します。
この建物は、今年、「2023 グッドデザイン賞」を受賞しています。
素晴らしいですね。
それでは、この建物の魅力について、一緒にのぞいてみましょう!

「素材の会社AGC~♪」のCMでおなじみのAGCという名前は、皆さんも、一度は聞いた事があるのではないでしょうか。
AGC株式会社は、「ガラス」「電子」「化学品」「セラミックス」の事業領域で新たな価値創造に挑戦している会社です。

今回は、そのAGC株式会社の千葉工場にお邪魔してきました。

千葉工場には、様々な形の、いかにもといった工場建築がたくさん建ち並んでおり、まさにこれが工場萌えの世界!という言葉が相応しい雰囲気です。建築好きの私は着いた瞬間からワクワクが止まりません。
工場は、ものを製造する為に形作られた合理的な建築ですので、むき出しの配管が壁についていますし、煙があがっている様は、さながらサイバーパンクの世界のようで、思わず見入ってしまいます。

それでは今回は、そんな千葉工場内に新しくオフィス棟として建設された「KIND Center」の施設紹介と撮影の様子をお届けしたいと思います!

建物の中心は吹き抜け空間となっており、南北レベル差の違うフロアが、この吹き抜け空間を介して見通せます。

そして、様々なレベルに張り出すフロアを繋ぐように設けられた階段は、複雑な導線にも関わらず、ビル全体の空間を一体化する役割をも担っていることに気づきます。

フロアを経由する経路もあれば、階段をぐるぐる回って移動することもできます。
実際に歩いていると、景色が様々に変化し、まるで散歩をしているような感覚になり、とても面白いです。
その時々の気分で違ったルートを選ぶことが出来るのは、働く人にとっても楽しそうですし、偶発的な出会いや交流が生まれ、新しいアイディアやプロジェクトもうまれそうなワクワクするオフィス空間となっています。

そして、その中で最初に目に入ってくるのは、この吹き抜けの真上を覆う光天井です!
この光天井のインパクトが半端なく、光がオフィス全体に広がっています。
実はこの光天井は、昼間は自然光により、夜は人工照明により光らせているのですが、
この様な象徴的な光の存在があるとオフィスが活気づきますよね。

この光天井を中心に執務エリアがグルっと取り囲んでおり、どこにいてもこの光を感じる事ができるので、働く人への安心感にも繋がっていますね。

今回、この光天井をドローンで動画撮影してみました!
ドローン撮影は、人が近づく事が出来ないような場所にも近づく事が出来るので高所のより繊細な質感なども撮影することが出来ますし、高低差のあるダイナミックな画も撮れます。

こんなに近くまで行けますよ~。
今回の現場のように、写真ではどうなっているかわかりづらいプロジェクトでも、動画だと建物の構造がよりわかりやすく、臨場感をもっておとどけする事が出来るので、
広報としては嬉しいところです!

ここで突然ですが、照明デザインのポイントを1つご紹介します!

この吹き抜けの真上を覆う光天井、非常に綺麗に光って見えますよね。
しかし、実は光天井は、綺麗に光って見えるようにプランニングするのがとても難しいのです。出来上がったものだけ見ると簡単そうに見えますよね。

特に光天井内の断面の設計が難しく、天井素材と照明器具の距離を適切にとらないと器具と器具の間に影が出来てしまい、「ここに照明器具がありますよ~!」と発光面の向こうに照明器具の存在が目立ってしまいます。
せっかくの綺麗な光天井に縞模様のような光のラインが出てしまうのは、残念ですよね。

今回の現場では、見事なまでに綺麗な光天井となっていました。

光天井の考え方は、言葉だけでは分かりづらいと思いますので、図にて詳しく解説してみましょう。気になる方は是非、ご覧ください♪

※光天井照明の考え方

ランプとランプの間隔を(S)。ランプと天井乳白膜間の距離を(D)とします。

光天井は、光っている面に光と影のムラが生じないように、ランプ間隔(S)とランプと天井乳白膜間の距離(D)の関係に気を付ける必要があります。
ランプと天井乳白膜間の距離(D)に対して、ランプの間隔(S)を同程度確保する事が必要になります。

(D)の距離に対して、(S)の距離が離れすぎてしまうと。下の図のようにランプとランプの間に影が出来てしまい、失敗になります。
街の中でもたまに光と影で縞模様になってしまっている光天井を見かける事ありますよね。あれは、その距離の設計が間違っているという事です。

※シマシマの光天井は設計ミスと言えます!

次は、執務室をのぞいてみましょう。

ここにもシリウスらしい細部までのこだわりが沢山あります。

まず、1つ目のこだわりポイントは天井のライン照明です。

初めて入ったオフィス空間のライン照明自体の眩しさに、「このオフィス何か目がチカチカするな。ちょっと居心地が悪いなぁ~」と思った経験はありませんか?

このプロジェクトでは、そうはならないよう、きちんと目に入ってくるライン照明の眩しさを抑え、快適な明るさに調整しています。

器具の眩しさを感じないので、自然と内装デザインに意識が向けられ、建築家の表現をそのまま体感できる、建築設計を支える照明デザインと言えるのです。

こういった細かいこだわりが、実はプロジェクトの全体の質を引き上げているんですよね。

そして、2つ目のポイントは特注のデスクライトです。

先ほど、天井のライン照明の明るさが抑えられていると、ご紹介しましたが、それにより、机の作業面の明るさは大丈夫なんだろうか?と思いますよね…。しかし、そこもちゃんと考えられています!それぞれの机にはきちんとデザインされたタスク照明がついているんです。

この照明器具のポイントは、机の上で邪魔にならないようなスマートで、すっきりしたデザインと、それでいてちゃんと照度がとれている所です。さらに、下部にボタンがついており、自分の机部分だけ、つけたり消したりと、照らすことが出来ます!
なんと便利な!そしてエコ!

このデスクライトでしっかり照度をとっているので、天井のライン照明の明るさをおさえても大丈夫だったんですね。

デスクライトと天井のライン照明の直線的なデザインがしっかりリンクしているのもシリウスらしいですね。

皆さん、「タスク&アンビエント照明」という考え方はご存知でしょうか。今回のプロジェクトで言えば、先ほどのデスクライトが「タスク」、天井のライン照明が「アンビエント」になります。「タスク」照明できちんとした作業用の机上面照度を取る事によって、天井の「アンビエント」照明は建築のデザインをいかすような抑えた明るさでもオフィス機能として成り立つという照明手法になります。さらに今回のプロジェクトの場合は、個別スイッチにより使わない時はそこの「タスク」照明だけを消せるという環境負荷への配慮と省エネ化をしっかりおさえた計画となっています。

シリウスは、消費エネルギーのような細かい所まで綿密に計画した上で、美しさも追及していますよ~。

さらにオフィスの中を進んでいくと、上の写真のような休憩スペースもあり、また違う落ち着いた雰囲気の暖かい光の照明デザインになっています。
ここでゆったりと休憩すれば仕事の効率も上がりそうです。自分の好きな雰囲気の居場所を選んで過ごせるよう、色々なタイプの意匠照明が用意されています。

エントランスを奥へ進むと、大人数でのミーテングや発表会にも利用できるように設えた、大階段状のスペースがあります。
こんな開放的な空間だと議論も弾みそうです。この場所からダイナミックに見える様々な天井も魅力的なんです。

外からも、もちろん撮影しましたよ~。

外からみると、建築の直線的なデザインと天井のライン照明が見事にマッチしているのがわかります。

まさにこの建築の為に導き出された最適解の照明デザインと言えるでしょう。

一通り全体についてレポートしてきましたが、このワクワク感はいったい何なんだ…?
空間を堪能した私は考えました…。

そう、このプロジェクトは「歩きまわる楽しさを教えてくれる宝探しのような建築」なのです!!

みなさん、子どもの頃に公園で宝探しをやった事はあるでしょうか。
親や先生が草木の中に宝物を隠して、みんなでそれをみつける遊び。
私は大好きでした。
「みつけた!ここにあった~」という喜びは格別ですよね。

この建物は、空間の中を歩き周る中で、光天井が出てきたり、ラインの天井照明が見えたかと思えば、丹念にデザインされたタスクライトを見つけたりする事ができます。
歩くたびに景色が変わり、宝物のように素敵なデザインを見つける事が出来ます。

歩き周っていると様々に景色が変わるので、つい歩き周りたくなるし、居場所を選べる多様な環境が用意されています。オフィス空間でも色々な人との交流がうまれ、新たな発想や成果を誘発するように出来ているのだなと感じました。

建築デザインでも素敵な宝物のようなデザインを空間の中に散りばめていますが、照明デザインでもその宝物を増やす事で、より働く事が楽しい空間になっているのでは、と感じました。

さて、「現場好き広報」の現場レポートは今後どんどん続けていきたいと考えておりますので、皆さん是非ご期待ください!様々な視点から魅力をお届けしますよ~!

次の現場がもう楽しみです~。

(おわり)

ちょっとおまけ

< 四方‘s 推しポイントのコーナー >
今回、私が推したいのは天井のライン照明の中で、ひょこっと1本はみ出したこの照明器具です!

この部分は天井に段差がついており、写真で言うと右側が一段高くなっているんです。
実はこの高い天井側の1本だけは、あえて吊高を低い天井の高さに合わせているので、宙に浮いているんです。
そして、この1本、侮ることなかれ!なんと浮いているだけじゃないんです!

↓※参考断面図

参考断面図を見るとわかると思いますが、この1本だけには、下を照らす下向きの光源以外にも、天井をふわっと明るく照らす、アッパー照明が特別に入っているんです。
本当に芸が細かいですね~。感心します。

この1本がいるお陰で、スキップフロアが作る天井の段差の特徴をそれとなく感じさせることができているのですね!通常ならばすべて天井に納めて終わりになりそうですが、この様な遊び心がシリウスらしさをつくっています!